乾いた風、真っ青な空の下で賑わう声。
赤の国の城下町ブランディアでは、年に一度の催し物を前に、民が湧いていた。

「いらっしゃい!もうすぐ“闘技大会”だからね、安くしとくよ!」

「お客さん、どうだい!
これは国産の宝石だけで作られた首飾り、こっちはちょいと曰くつきのシルクだ!」

道行く人に威勢よく声をかけ、自分の店の品を勧める商人達。
時々その声に誘われて立ち止まる人々を避けるように、速足で行く者がいた。



彼はレンガで出来た大きな闘技場の前で立ち止まる。
城の近くで露店を広げている様子とは違い、ここは少々薄汚い。
壁にもたれて力なく座り込む痩せこけた若者、もはや生きているのか死んでいるのかわからない老人が横たわる姿。
裏路地を覗きこめば、非合法の植物を使って廃人と化した者達が倒れている。

――本当に、いつ見ても汚い・・・。

放置されている遺骸を鼻先で突いて漁る野良犬を横目に、彼は闘技場の裏へまわり込む。



「何ぃ?
闘技大会に出たい、だと?」

粗野な大男を前に、彼は無表情のままだ。
まじまじと彼を眺めた大男は、にんまりと笑う。

「兄ちゃん、いいトコの出身か?
ここはあんたみたいな小奇麗な奴がくるところじゃねぇぜ。
まぁ、別の用途はあるかもしれねぇな・・・?」

彼の首に下がるネックレスに興味があるのか、大男は手を伸ばす。
すると、脊髄反射の如く青年の鉄拳が飛んだ。

「ぐほァ?!」

「すべこべ言わずに俺を闘技者として登録しろ。
さもないと今ここで剣の錆になるぞ」

「あーぁ・・・。兄ちゃん、死んだな。
そこまで言うなら登録してやるが・・・生きて帰れると思わない方がいいぜ」

がっはっは、とあくどい笑い声を上げると、大男は青年に、番号が刻まれた銀のプレートの腕輪を渡した。

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