「ね~、カイヤ~ん!
これ食べない?美味しいよ?ていうかメノウさんの料理全部美味しいから!
マジでこれだけは最高のオプションだと思って!」

「変な風に呼ばないでくださいっ!
別に、ボクお腹空いてな・・・」

きゅるる、と鳴る。
真っ赤になったカイヤは、怒りをぶつけるように目の前の夕食に食らいついた。

「強がらなくていいじゃん。
君の弱さを見たって、笑う人なんてここにはいないよ」

ガツガツと皿を平らげていくカイヤを正面で眺めるアンバーは苦笑いだ。

「ごちそうさまっ!!
それじゃ、布団借りますから!!」

何を怒っているのか、カイヤ自身にもわからない。
とにかく今は1人になりたくて、おやすみと呑気に手を振るアンバーを見もせず部屋へ引っ込んだ。





部屋は共用だが、いびきをかいて眠るジストと窓際で日課の祈りを捧げているサフィから離れた場所に横たわる。

「カイヤさん、少しいいでしょうか」

囁くようなサフィの声。
優しく温和そうな彼女には強い言葉をぶつける勇気がなく、カイヤは黙って顔をこちらに向ける。

「大丈夫です。カイヤさんの祈りもきっと届きます」

「ボクの祈り?」

「博士さんがどうかご無事でありますように・・・。
私も今、女神様にお祈りしました」

「そう」

カイヤは神仏を信じない。それは曲がりなりにも一研究者である誇りがそうさせているのだ。
証明できない存在を信じる事など、数式で出来上がっている頭ではできそうもない。

「ジストさんも、同じなんですよ。
緑の国からはるばるここまで来たんです。大切な人の手がかりを求めて、黒の国へ行こうとして」

「あの姫様が・・・?」

「私は、ジストさんの力に救われました。
きっと大丈夫。だから安心してください」

穏やかな言葉の羅列。いつ以来だっただろうか。
カイヤは目の奥が熱を持つのを感じた気がした。

「少しは・・・グレンさんの判断に感謝しておこうかな」

「グレンさんの・・・?」

「ううん、なんでもない。おやすみ」

せめて夢の中でまた会いたくて。
目を閉じたカイヤは、小さい頃からの記憶を静かに辿り始める。


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