船内の一室を借り、5人は荷を下ろす。
ベッドを見るや否や、ジストはすぐに寝転んで寝息を立て始めた。
「ほんま王族なんやろか・・・
どこでも寝られるんとちゃうか、こいつ」
「こんな窮屈な場所・・・気分が悪い」
無防備に幸せそうな寝顔でいるジストを見下し、コーネルはつかつかと扉の方へ向かう。
「どこ行くの、王子?」
「風に当たる」
バン、と乱暴に扉が閉められた。
「王子様、具合でも悪いのでしょうか・・・」
心配そうに扉を見つめるサフィ。
「俺、ちょっと王子の様子見てくるよ」
もとい、船内の探検がしたいんだ、とアンバーは王子を追って部屋から出て行く。
部屋の中は途端に静かになった。
「あ、あの、メノウさん」
「ん」
地図を広げて眺めている彼に勇気を出して声をかけてみる。
「いつかちゃんとお礼を言おうと・・・。
あの時、私とアンバーさんを助けてくださって本当にありがとうございます」
メノウは手元の地図を眺めたままだ。
「それで、あの、これから向かう白の国・・・なのですが」
言いづらそうな気配を察知したのか、彼は静かに顔を上げた。
「・・・白の国、アルマツィア・・・。
そこにも、他の国と同じように傭兵ギルドがあるんですけど」
忙しなく視線を泳がせるサフィは何かを言いたげだが、言葉を慎重に探しているのか黙ってしまう。
「なに」
続きを促すと、彼女は深々と頭を下げた。
「そのギルドには・・・行かないでください」
お願いします、と小さく続く。
「なんや。なんかあるんか、そのギルドに」
「い、いえ、その・・・
何か、という何かがあるというか・・・なんというか・・・」
はっきりしない物言いだ。
「別に寄る予定はない。
今あのギルド近辺は外部の連中が入れんように規制されとる。
あそこで何があったかまでは知らんがな」
「そ、そうなのですか?!」
ほっと胸を撫で下ろす彼女。不審だ。
「ギルドに行けん、て・・・
お前らひょっとしてあれか、手配犯かなんかか」
「ち、違います!
・・・いえ・・・違うと、思います・・・たぶん・・・」
それ以上は詮索しなかった。
それでも何か、“彼女達”に公にできない秘密がある事を感じ取った。
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