「えっ?!女の子だったの?!マジで?!」
「マジだぞ。私は王子だが本当は王女なのだ」
「あーびっくりした。
サフィにデロデロしてるから、また変な虫かと思っちゃったじゃん」
場所を移した4人はお互いについて打ち明ける。もっとも、煩いのはジストとアンバーだけで、残りの2人は静かに茶を飲んで聞いている程度だ。
「そういえばアンバーとやら。
サファイアをサフィと呼んでいるようだが・・・」
「そう!サフィ!可愛いでしょ!
俺が付けた名前なんだ♪」
「うむ、愛らしい。私もそう呼んで構わないだろうか?」
突然話を振られたサファイアは驚いて小さく跳ねたが、急いでコクコクと頷いた。
「盛り上がるのもえぇけど、お前ら、何か“ある”よなぁ?」
核心を突くような鋭い視線が刺さる。
「あはは。まずは驚かせた事の説明しなきゃだよねぇ」
アンバーは手を伸ばす。その手がメノウの手首を掴んだ。
「なっ、冷たっ?!」
「冷たいだと?」
ジストも横からアンバーの手に触れる。そしてあまりの冷たさに手を引っ込めた。
それは冷えた手ではない。――血の気のない冷たさだ。
「俺、こう見えてもう死んでるのさ。
さっき博士さんが言ってた通り。死体が動いてるんだよ。この子の魔力でね」
冷たい手が、フードを被ったサファイアの頭の上にポンと乗る。
「きっと、私の“この力”を狙って、追いかけられていたんです・・・」
賑やかな昼の光景を眺めながら、彼女はしんみりと語る。
「私が、その・・・熱を出して倒れてしまったせいで、きっとアンバーさんも動けなくなってしまったんだと思います。
もしジストさんやメノウさんがあの時あの場にいらっしゃらなかったら・・・私達・・・」
重ね重ね、彼女はお礼を言う。
「俺達ってなかなか危ない組み合わせだと思うんだよね。片方が動けなくなったら共倒れ。
今日は運が良かったけど、次はないかも」
「何が言いたいんや」
聞かずともおおよそ予想はついていた。
アンバーは大袈裟に手を合わせて頭を下げた。
「お願いっ!!俺達も君らと一緒に行かせて!!
タダでとは言わないからさ!!」
「んなの、許せるわけ・・・――」
「あ、ごめ~ん!
お姫様との2人旅を邪魔しちゃうかな?」
「お前なぁ・・・?」
ギリギリと歯を鳴らすメノウの傍らで呑気に茶を飲むジストはもちろんにこやかに頷く。
「もちろんだ!
共に行こうではないか、サフィ!・・・と、ついでにアンバーも」
「俺ついでなの?!」
「待て待て待てぇ!!
姫さんわかってはる?!こない素性もわからん奴を・・・」
「君が言えた立場かね?
それに、主命令は絶対だぞ」
言い返せずにメノウは黙って大きなため息を吐いた。
「い、いいんですか・・・?
私達、を・・・」
「二言はない!
旅は道連れだぞ!!はーっはっはっは!!」
「よっ、ジスト姉さん男前!!」
あぁ、騒がしい。
苦々しい顔で手元の煙草を弄ぶメノウにサファイアは申し訳なさそうに何度も頭を下げたのだった。
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