夕暮れの王都。最近は風が冷たくなってきた。
道を行き交う民は足早で、それでもどこか浮ついたような足取りだった。



明日は、この“緑の国”を治める国王の息子たる王子が齢18を迎える日だ。
王都であるミストルテインでは、王子の成人の儀と戴冠を祝う祭りが行われる予定である。

臥せる国王を、もう数年は支えてきただろうか。王子はついに、成人を迎えると同時に王位を戴く事になった。若く、賢く、暖かい彼の戴冠を、民は喜んで受け入れる。
より良き未来への出発となる明日のため、民は各々総力を挙げて祝祭の準備を進めていた。
そんな中、前日となる今日、夜から催される前夜祭のために多くの者がぞろぞろと広場に集まりつつあった。



その夜の風に乗って迫るモノになど、祝杯に眩む人々には見えているはずもなく・・・――


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