トキのセンスで選ばれた衣服を身にまとい、アメリは満足げにうんうんと頷いて鏡を見つめる。

「素晴らしい! 助かったぞ!
ありがとう二人とも!!」

くるり、と回って見せ、輝くような笑顔を浮かべる。

――ヒメサマそっくりやな、この子。

時間だ、とせっつく侍女に会計を丸投げし、アメリは改めてハイネとトキに向き合う。

「偶然の縁であったが実に楽しいひと時であったぞ!
そうだ、諸君。もしよければ、今夜の宴に私の友人として出席してみないか?!」

「う、うたげ?! パーティーってこと?!」

素っ頓狂な声を上げたハイネに、アメリはまたも大笑いする。

「なぁに、別に大した宴会でもないのだよ。ささやかなものさ。
父上の親類や、他国のお客人を招いていてな、まぁ気楽に飲んで踊って、親睦でも深めようという魂胆さ」

「あっそうだった。母さん、今日パーティーだって言ってた……」

トキの呟きを聞いて、アメリは体全体で驚いて見せる。

「なんてこった! 君はもしやマオリ殿のご息女か?!
ならば話が早いな! 赤髪の君もぜひ来てくれたまえ。さ、これが招待状だ!」

アメリが差し出したカードを流れで受け取り、ひゅっと青ざめる。

「い、いや、うちにお城のパーティーとか絶対ムリ……」

「では今夜会おう! また後でな! はーっはっはっは!!」

半ば強引に招待し、そしてアメリは侍女を連れて店を後にした。

「むっ……無理無理無理無理!! トキちゃん、どないしよ?!」

「せっかくですから、一緒に行きましょうよ。
母さんに言えばハイネさんのドレスも用意してくれると思います」

「そっ、そういう問題ちゃうんやけど……!!
あっ、アンリ先生は?! アンリ先生が行くならうちも何とか……」

「父さんはアキとお留守番です」

「あんまりや……」

王族や貴族が集まる宴に、明らかな場違いさを露呈しなければならないなど……――
旅の先行きよりも、まず今夜の山場を越えられるかどうかで胃が痛くなりそうだ。



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