暗闇を赤く染める松明の列。
右だ、左だ、と男達の声が響く。
揺らめく火の軍隊を、すぐ傍の木陰から見送る二人。
蹄の音が遠のくと、彼らは安堵の息を漏らした。
「何とかやり過ごせたなぁ。くくっ。悪運強いのぉ、殿下は」
独特の訛り口調で笑う赤髪の男は、隣でフードをとった青年に目をやる。
深紅の外套で青年が隠していたものは、この暗闇では目立ちすぎる白金髪。そして、鞘に収まった曲剣だ。
青年が微かに頭を振って乱れた髪を整えたのを確認すると、赤髪の男は構えていた銃をホルスターに収めて顎を傾ける。
「今のうちに行くで。明け方までに赤の国を抜けんとな」
コクリ、と頷いた青年を連れ、男は速足で東に向かったのだった。
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