とても、長い時間に感じられた。
傍から見れば一瞬だったのかも、しれないけれど。

「ユーファ、なんで……?!」

「あぁ、心配すんな。さっきの小石の通りなら、お前はどこかの世界へ飛ぶ。俺は跳ね返される。それだけや。
見送りに来たったで。寂しがりのお前のためにな」

ユーファに抱えられながら、落ちていく。
空がどんどん遠退く。仲間達の戦いの気配すら、夢の向こうへ消える。

「ったく、泣き虫め。また泣いとるんか」

涙の粒が“空へ落ちていく”。
その一粒が、ユーファの頬を撫でた。

「……お前に俺は救われた。大切なものが増えた。この世界に来てくれて、ありがとうな。
この先またお前は1人になってまうが、絶対、またお前についてくるヤツが現れるさ。
お前はそういう人間だ。お前はヒトを傷つけずに、“戦える”。
誇れよ。きっと“お前の親父”も、お前のそんな姿が誇りになるだろうよ」

「この期に及んで……何言うとるのよ。調子狂うわ……」

「そうか、悪い悪い。
こんなところででしか言えへんからな。こんな気取った台詞は」

ハイネの胸元で浮かび上がる懐中時計。星の粉のような光が溢れる。

「……ユーファ、ここまで一緒にきてくれてありがと。
皆にも、伝えておいてくれると嬉しいな」

「もちろん、言っておく。親父やお袋にも、お前の言葉は届けておくさ」

温かくて懐かしい温もりが、静かに離れる。

――あぁ、お別れなんだ。



「時々でいい。この世界のこと、思い出してくれ。
俺も時々思い出す。忘れないさ、俺達は。
それじゃあ、元気でな、ハイネ」



『いってらっしゃい』。

彼の声が遠くへ消えていく。
ハイネは静かに目を閉じた。

『うん。……いってきます!』





【第一部『最初のセカイ編』END】

第二部へ続く...


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