金の入った袋を受け取ったペトラは、満足そうに笑みを浮かべる。

「ざまぁないわね!
“最後の相手”があたしでよかったって思ってもらわなきゃ♪」

無事にアキを連れ戻し、トキは何度もペトラに頭を下げている。

「本当に本当にありがとうございました。
もう、なんとお礼を言ったらいいのか……」

「ああん、いいのよ。可愛い弟くんが無事だった事を喜んでればいいの」



――そう。このペトラが、3時間の間にシンハを懐柔してアキの事を吐かせたのだ。

ペトラが持ち帰った話を聞くや否や、トキは斧を片手にニヴィアンの屋敷へ押し入り、アキに迫っていた危機を粉砕したというわけだ。

「うーん、シンハ様はなかなかご贔屓の方だったけど、アキ君の命には代えられないわねぇ。
別のお客様を探さなきゃ」

「本当に……すみません……」

「だから気にしないでってば。これだけあればしばらくラクに暮らせるもの♪」

嬉々として報酬をしまいこみ、ペトラは荷物をまとめる。

「それじゃ、道中気をつけてね。また困ったらあたしを探すといいわ。
じゃあねん♪」

ヒラヒラと手を振り、彼女は酒場の方へ立ち去って行く。





失くしていた片方の靴を履き直し、アキは改めて、もじもじと決まり悪そうな仕草をする。

「その……ありがと。姉ちゃんも、ハイネも、……ついでにユーファも」

「俺は“ついで”かい!!」

「だってぼくから目を離したのはお前じゃん!!」

それでも、とアキは笑う。

「怖かったけど、助けてもらえて嬉しかった」

「うんうん、無事でよかったよー、アキくん!
ほんま、トキちゃんめちゃくちゃ心配しとったんやからね」

「姉ちゃん……」

見上げると、トキは愛おしそうにアキの頭を撫でた。

「姉さんはどんな事があってもアキを守るから。だって大切な弟だもの」

ゆっくりと夜が更けていく。
4人は手を繋いで宿屋へ帰った。



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