あっけらかんとしたジストは翌朝元気よく手を振って城を去る。
引き止める間もなく、彼女は人混みの中に消えていく。

「あれが本当に全てを失くした者の態度か?
本当に、ジストの精神力には驚かされる」

窓越しに旧友の子を見送るラズワルドはぼんやりと呟いた。

「・・・強がっているだけ。
あんな奴を得体の知れない者と共に行かせるなど・・・」

「なんだ、まだ言っておるのか。
・・・なに、そこまで不安にならなくてもよかろう。
傭兵は傭兵でも、逸材を雇ったようだからな」

「逸材?」

ラズワルドは振り返り、コーネルに顔を向ける。

「“赤豹”だ。間違いない。
あの炎のような色の髪、朱の瞳。あの者は、その強さ故に様々な貴族から契約を持ちかけられているらしい」

「貴族が傭兵を?!」

「わかりやすい理由だ。金で買って、自分の身を守ろうという算段だ。
わしもその名は耳にした事がある」

「金で買う契約なら、すればいい。
奴の目的は金だと言っていた。何故話を飲まない・・・?」

「さてな。そこまでは知る由もない。
誰にも語らないのであろう。傭兵とは、そういう者達の“居場所”だ」

父の言葉を聞きながら、コーネルは自分に問う。

(本当に信用していいのか?)


――否。


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